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単独インタビュー LIM統括ディレクター KANTARO氏

美容師は、世界を変えることができる仕事。それに気づいた時、世界への扉が開いた。

LIM統括ディレクターとして、業界では知らぬ者はいないとさえ言われる「KANTARO」。大阪、東京、シンガポールの3都市を週単位で飛び回りながら、常に全力で美容のシーンを牽引し続ける彼に、彼自身の美容業界におけるルーツと、グローバル展開についてのビジョンを語ってもらった。

大切なのはきっかけや動機じゃない。どう取り組んでいくかが大切。

美容の世界に入ったきっかけは、実は軽い気持ちからだったんです。高校3年生の時に、そろそろ進路を決めなきゃって時期になって、「自分は何がやりたいんだろう?」って考えたんです。思い浮かんだ選択肢は3つ。料理、洋服、それと美容。元々、モノづくりが好きでファッションにも興味があった。そこで選んだのが、美容だったというわけ。感動的な物語を期待されると申し訳ないんだけど(笑)。
でも、物事を始めるきっかけっていうのは、案外どうでもいいって思うんです。大切なのは、始めてからどういう風に取り組んでいくのか、どれだけそれに熱を入れて打ち込めるか、ってことですよ。

仕事に対して感じたギャップ。それが次のステージへの原動力に。

高校卒業と同時に、地元・福岡を離れて大阪の美容室に就職しました。友達や知り合いが一人もいない土地に行きたかったんです。友達が近くにいると仕事よりも遊びに流されてしまう、そんな自分の弱さを知っていましたからね。大阪に来て、一番最初に仲良くなったのは、近所のコンビニでパートで働いているおばちゃんでした(笑)。休みの日に遊びに行くところも知らないし、一緒に遊ぶ友達もいない。仕事に打ち込むしかない環境でした。
修行のために大阪に来たつもりだったから、仕事がキツいとは思いませんでしたね。でも、仕事の内容にはギャップを感じていました。馴染みのお客様が来店されて、オーダーされるままにカットする。それじゃまるで、お客様がデザイナーで、美容師は単なる作業員じゃないですか?そこには、ヘアデザイナーとしての提案なんてものは存在しない。それがどうしても自分の中で納得いかなかったんです。
そんな時に出会ったのが、LIMでした。お客様のニーズとヘアデザイナーの思いを上手く融合させていく、いわゆる提案型のサロンのあり方に「これが美容師の仕事だ」って思いましたね。当時は、カリスマ美容師ブーム直前の時期で、この世界もどんどんメジャー志向になっていっていた頃。でも、LIMにはそういう派手さやオシャレさだけじゃなく、お客様とコミュニケーションしながら満足を創りあげていくっていう、美容師の仕事の本質を感じたんです。

東京での成功。でも、“その次”が見えなかった。

LIMに入社してからは、とにかくがむしゃらにがんばった。おかげで大阪では、LIMも、KANTAROっていう人間も、それなりに認められるようになったっていう時に、やっぱり東京に進出するっていうことから目を背けられなくなったんです。立ち上げまでは色々な苦労もありましたが、3年ほどかけてプランを練ってようやくオープンに漕ぎ着けた。そうやって、苦労してオープンした東京の店舗が無事に軌道に乗って来た時に、ふと「次はいったいどっちに進めばいいんだ?」って、わからなくなった。東京の次は?って考えたら、自分の中に答えがなかったんです。

自分の技術で、世界を変えられるかもしれない。

その頃、年に3回ほど長期休暇を取っては、タイに旅行に行っていたんです。チェンマイでトレッキングしたり、少数民族のカレン族の集落で一緒に生活したり……そんなことを趣味でやっていたんです。そうやって毎年のように同じ集落に足を運んでいると、前回訪れた時にはいたはずの年頃の女の子がいなくなってたりするんですよ。「都会に働きに行った」って言うんですが、よくよく聞いてみるとこれが結構ひどい話でね。売春なんかは当たり前で、ひどいケースだと臓器売買や人身売買なんかもある。とんでもない話です。自分にも同じぐらいの年頃の子どもがいたので、何とかできないかと考えてユニセフに募金したり、里親制度にも登録しました。でも、どうもしっくりこない。
そんなことを考えていた時に気づいたんです。自分自身、高校卒業までどうしようもない奴だったけど、この世界に入って技術を教えてもらって一人前の美容師になることができた。同じように、自分が苦労して身につけてきた技術を教えることによって、そういう子たちの自立を支えることができるんじゃないかと思ったんです。大げさですけど、自分の技術で世界を変えられるんじゃないか、なんてね。

ブランドとしての力が、美容師の地位向上につながる。

残念ながらタイには、外国人が美容師として働くことができないという法律上の制約などがあり、紆余曲折の末にシンガポールにLIMの海外1号店を出店することに。日本のヘアサロンならではの技術とサービスを提供するためにも、スタッフは全員日本人。シンガポール2店舗目も順調に軌道に乗り、LIMというブランドは、着実にシンガポールでは定着しつつあります。

アジア各国では、日本と比べて美容師の社会的地位はまだまだ低いんです。LIMの知名度が上がってブランドが確立されれば、結果的にはそれが美容師の社会的地位向上につながるだろうと。将来的には、シンガポールを起点にしたアカデミーを立ち上げ、美容教育を通して人を育てていくのが目標です。何年かかるかはわかりませんが、そういう思いを持ち続けるところから世界は変わると思うんです。

グローバル時代に必要なのは、“アイデンティティとミッション”。

最近は、海外に活躍の場を求める若い世代も増えつつありますね。そういう若い人たちに、いつも言っていることが二つあります。一つは、「何をしに行くのか、何を得て日本に帰って来るのか、それをちゃんと自分の中に持て」ということ。行けば何とかなるだろう、っていう甘い考えでは絶対にダメ。せっかく海外に行っても、日本人としか付き合わず、友達の家で日本人の頭をカットしてチップをもらって……という話をよく聞きますが、それじゃあ海外に行く意味なんてない。目的が明確な人は、ちゃんと海外で何かを成し遂げて、グンと成長して帰って来ますよ。

もう一つ大切なのは、日本人としてのアイデンティティや、美容師としての誇りや使命をしっかりと自分の中に持つこと。自分は何者なのか、何のためにここに来たのか。それを見失ってしまうと、長続きはしません。シンガポール勤務のLIMの若いスタッフにも、アイデンティティとミッションを持たせることを、まずは徹底してやっています。それが、最前線で働いているんだというプライドにつながり、モチベーションになるんです。海外進出を考えておられる経営者の方々にも、しっかりとしたアイデンティティとミッションをスタッフに意識づけることを重視していただきたいですね。

美容の仕事を通して何を為すべきか、という哲学を持て。

3.11以降、社会の中の様々なところで、それまでとは価値観が変わりつつありますよね。美容業界もそうです。一昔前は、美容師として成功して、いい車に乗って、いい家に住んで……っていうサクセスの形があって、そういうのにぼくも憧れていたけど(笑)。でも、今は違いますよね。ファッション性やオシャレさを追求するだけじゃなく、美容師の仕事を通して世の中のために何ができるのかっていうことを考える時代になってきているんじゃないかな。お客様もそういう部分を判断基準としてちゃんと見ているから、上っ面だけでやっているところは、これからはどんどん淘汰されていきますよ。業界としても、美容師っていう仕事が世の中のためになる素晴らしい仕事なんだっていうことを、しっかりとアピールしていかなきゃいけない。
若い美容師の人たちは、自分が美容という仕事を通して、世の中に何ができるのか、何を為すべきかということをひとつの哲学として、自分の“芯”を持てるようになってもらいたいですね。しっかりとした“芯”があれば、日本の中に限らず、世界中どこに行っても通用します。そういう意味でも、美容師と言う仕事は、まさに修行ですよね。技術を磨くことも大切だけど、それ以上に、人間としての修行みたいな部分が大きい。これから美容師を目指す人たちは、そういう過酷な世界だということを理解した上で、敢えて飛び込んできてほしい。その過酷さを乗り越えてこそ、成長もするし、それだけ大きなものをみんなに返すことができる存在になれるはずだから。ぜひ、その苦しさを味わって、そして、思いっきり楽しんでください!

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